定電流ダイオード CRD(Current
Regulative Diode)は、最近LED関連では良く耳にするというか目にする素子です。
*CRDは、定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)ではありませんので勘違いしないようご注意ください
LEDの基本でも書きましたが、昔はさほど使われていませんでした。
しかし、ここ最近CRDの性能が上がったためなのか、LEDの性能が昔に比べて段違いに良くなったためなのか、簡単にLEDの輝度を安定させることができるということから注目を集めています。
なぜCRDを使うかというと、数十mAレベルの電流安定化では一番簡単だからです。
数十mAならば電子回路で定電流回路を作るより、断然簡単にできます。
このお手軽さの良さがCRDをLEDの輝度制御で一躍有名(?)にしたのではないでしょうか。
今回は、使用方法を織り交ぜながら基本を簡単に説明していきたいと思います。
CRDの形と極性
これを知らないとLEDにつなぐこともできません。
とはいうものの、CRDといってもダイオードの一種ですので形と極性は同じです。
特別変わったところはありません。
ということですので、寸法が知りたい方は、メーカー(石塚電子など)のHPをご覧ください。
CRDの回路記号
回路記号は通常のダイオードの記号とは少々異なり以下のような表記となります。

Aがアノード、Kがカソードです。
ダイオードなので、アノードに+、カソードにマイナス、またはアノードからカソードに向けて電流を流すようにする必要があります。
こうしないと電流を一定にする効果が発生しません。
CRDの電圧−電流特性
さて、CRDで一番大事なことは、この電気的特性です。
少々専門的になりますが、自分で接続しようとする方は必須の知識ですので我慢して理解してください。

CRDの電圧−電流特性のおおまかなグラフです。
なんだか、きれいな形のグラフではないですね。
良く見るとある電圧範囲の電流がほとんど変化していないことがわかります。
つまり、この部分が定電流となっている部分です。
CRDはこの平坦になっている電圧範囲内で使用してやると、流れる電流がほぼ一定になるという特性があります。(実はこの平坦部分で使うというのが、それなりに難しい)
この特性カーブのそれぞれには名前があって以下のように呼ばれています。

a点 : ピンチオフ電流
要は定電流になる値のことです。
e電圧以下ならば電流の上限値を制限してくれます。
尚、初心者の方で勘違いする方が多いのですが、CRDには電流の上限値を制限する機能はありますが下限値を制限する機能はありません。
CRDで言われている定電流は上限を制限するという意味です。
例えば、元々どうがんばっても10mAしか流れない回路に20mA用CRDを入れても、電流が20mAになるわけではありません。10mAより小さい電流になります。
b点 : 試験電圧
ピンチオフ電流を測定するためのメーカーが決めた電圧値です。メーカーでは10Vなどに決めて測定しています。
c点 : 肩特性電流値
CRDはどんな電圧でも定電流ではありません。
良く見ると、電圧が低くなると電流もどんどん小さくなっていきます。
この特性が肩の形に似ているので肩特性と呼ばれているようです。
この肩特性を表わす方法は、ピンチオフ電流を基準にします。
つまりピンチオフ電流からたとえば20%電流値が低くなった点の電圧と電流で表すわけです。
d点 : 肩特性電圧値
c点を表現するための電圧値です。
少なくともこの電圧以上(できれば、もっと上)がCRDに印加されないと定電流どころか、電流が大きく変化してしまうことになります。
電源電圧が変化しても一定の輝度にしたいのに、逆にチラチラするなんてことも起きてしまいます。
e点 : 最高使用電圧
この電圧までなら、CRDは使えますという電圧です。
要は、この電圧を一瞬でも超えたら壊れますという目安です。
この電圧ぎりぎりで使うのは危険なので、通常は変動幅を考えながら実際に使用する電圧を決めます。
または、使用する環境からCRDに要求される最高使用電圧を決めます。
例えば、車のバッテリーに接続して使用する場合、最高使用電圧は、単独ならば最低でも100V、コンデンサやサージ吸収素子を併用しても30V以上のものを選定したほうが安全です。
一般の方にはあまり知られていませんが、車のバッテリー電源はノイズが非常に多い電源で、電圧が常に細かく上下に変動しています。
また、古い車などでバッテリー端子がゆるくて走行中に瞬間的に外れた時などには一時的に百V近く発生することもあります。
車のバッテリー電圧は12Vや24Vで、家庭用のAC100Vより低いので気楽に思えますが、実は安定した12Vや24Vではないということを覚えておきましょう。
許容電圧の低い電子部品をバッテリー電圧にそのまま接続すると、ある日突然壊れたということもよくあります。
CRDの定格電力
CRDも電子部品ですから使用できる許容電力が決まっています。
つまり抵抗と同じくCRDが熱くなるので、定格電力以下で使用しましょうということです。
CRDで消費する電力は以下の式で求めることができます。
例えば、ピンチオフ電流20mAのCRDで定格電力が300mW 使用する時にCRDに印加される電圧が10Vだとすると
この場合は、定格電力300mWより小さいのでさほど問題ありませんが、できれば、CRDの消費電力は定格電力の1/2や1/3が理想です。
尚、この定格電力は周囲温度によって変化します。
おおまかには、周囲温度が80度〜100度だと定格電力は半分程度に減ってしまいます。
温度が高くなる可能性のある環境で使用する場合は、かなり余裕を持たないとCRDが壊れる可能性がありますので要注意です。
それを考えると使用時の消費電力は定格電力の1/4や1/6が理想ということになります。
(これは抵抗も同じ)
その2 使い方 に続く